睡眠中にも脳は学習している
レム睡眠と体内時計
人間に限らず、高等動物は睡眠中に夢を見ます。そして、夢を見ているときは眼球がぐるぐると速く動きます。そのため、夢を見ているときの睡眠はレム睡眠(REM睡眠)と呼ばれ、普通の睡眠(ノンレム睡眠)と区別されています。REMとは、rapid(速い)eye(眼)movement(動き)の略です。
だいぶ以前、夢は潜在的な願望の表れだと考られていました。しかし今では、あの支離滅裂ででたらめとしか思えない夢が、記憶を整理しているのだという考え方が主流になってきました。
夢を見ていないとき(ノンレム睡眠中)、呼吸や脈拍が遅く、脳波は静かです。ところが夢を見ているときは呼吸や脈拍が速くなり、脳波が活発になります。私たちは夢をみることによって、ごちゃごちゃした記憶を再生し、整理して記憶を固定化しているらしいのです。
だから、寝る前に勉強をするのが効率がよいということになります。勉強の後にテレビやゲームで脳を興奮させるのは、記憶にとってはあまりよくないでしょう。
ところで、よく「私は夜ほとんど夢をみない」とか、逆に「一晩中夢を見ていた」などという人がいますが、どちらも間違っています。夢を見たことを覚えているのは、目が覚めたときに強い印象のある夢を見ていた場合に限ります。レム睡眠とノンレム睡眠は誰でも一晩のうちに何度も交互にやってくるので、夢を見ないことも、夢ばかり見ていることもありえません。夢は「ほんの数秒の夢」でも、とても長く感じられます。夢は無意識の世界。しかも一晩に何時間も夢を見ています。見た夢のほとんどが思い出せないのは当たり前のことなのです。
睡眠中に脳が活性化し、記憶を固定することを立証
睡眠が脳にいいことに関連して、「よく寝たほうが脳の疲れが取れるから、学習効果が高まる」という考えがあります。しかし、これは逆で、脳は周期的にレム睡眠をとることによって活発になり、学習効果を高めていたのです。このことを実証する研究が、米国ボストン大学の教授グループによって発表されました。その研究では、複雑な画像をすばやく識別する訓練を被験者にしてもらいました。被験者は1回目の学習の後に睡眠をとるグループと、睡眠をとらないグループに分けられました。こうして再度学習をすると……どうなったと思いますか? 答えはもうわかりますね。
学習後に睡眠をとったグループは、同じ訓練をすると明らかに識別の正答率がアップしました。しかも、睡眠中の脳の画像を見ると、視覚情報を処理する特定の場所の活動が活発になっていました。脳の活動が活発な人ほど、その後の学習で正答率が上がったということです。一方、睡眠をとらないグループには再学習の効果が見られませんでした。
睡眠中に脳が活発に働らくことによって、学習したことが整理・復習され、記憶が固定化される!―この理論は、大脳各部の状態の画像を調べることによって、科学的に裏付けられたのです。
勉強は寝る前にしっかりとやり、それ以外の余分なことで脳を興奮させないことが大事だということが、これでおわかりになったでしょうか。
夜食も体内時計を狂わせて、脳に悪影響
睡眠にちなんで、受験生に大事なことがもう一つあります。それは、「寝る前の夜食は控える」ということです。私たちの胃は、夕食を食べて数時間後に休息に入ります。そして睡眠中は腸が働くことになります。ところが夜食を食べると、せっかく休息に入っている胃が再び活動し、本来、睡眠中に休むべきさまざまな体の部分が同時に働くことになります。
胃には体内時計の役割もありますから、睡眠中に胃が活発に働くと、体内時計が狂ってきます。つまり、寝起きが悪くなるのです。普通は朝の光を浴びて体内時計がリセットされるのですが、それがうまくいかず、午前中は頭がぼ~っとしていることになります。体内時計が狂うと、勉強しても頭に入りにくい状態になるのです。
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