続・数字記憶術
改良版「五十音式」と「語呂合わせ式」
五十音式の改良型
機械的な五十音・置換法は、語呂合わせよりは多少造語力が増したとはいえ、「や行」「ら行」「わ行+ん」などの組み合わせでは、作れる単語が少なく、とっさの場合に不自由な面があります。
実用的にはまったく問題ないのですが、数字記憶は実用を離れたゲームの要素が強いものです。競技会では機械的な五十音式は少し不利になるでしょう。そこで次のように部分修正すると、造語力が飛躍的に増します。
●改良① 「お」をあ行から外し、例外的に「0」とする
無理のない例外措置で、0を「わ・お(を)・ん」の3枚看板とすれば、かなり単語は増えます。
●改良② 「く」を例外的に「9」とする
大和言葉には元来、「ら」から始まる名詞はなく、ほとんどが漢語由来の抽象的な熟語です。そのため90台の数字変換は「ランプ」「ライオン」などの外来語頼みで不自由です。「く」が加わることで解決します。か行は一番目、二番めに来る単語が多く、影響はありません。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
わん+お | あ行 おを除く |
か行 くを除く |
さ行 | た行 | な行 | は行 | ま行 | や行 | ら行+く |
このように語呂合わせ法を一部(お・く)に導入すれば、使い勝手はよくなります。ただし、しっかりトレーニングをしないと、とっさの場合にうっかり間違えてしまうことがあります(「な行≠7」「は行≠8」も含めて)。自分流に改良する際は、例外を増やし過ぎないことです。
語呂合わせ式改良型
語呂合わせは、自然に身についた生理的な言語感覚に基づくものですから、その点では五十音式よりも優れています。ただ、言葉を作るのが極端に制限されるのが欠点でした。そこで、やや自然さが弱まりますが、語呂合わせに中国語と英語を導入することがよく試みられます。
次の表は数字語呂合わせのうち、2文字のものを除いた一般的な変換例です。一段目は日本語、二段目は英語(カタカナ)と中国語(ひらがな)です。さらに、0と9も造語力が足りないので、例外的に別の視点から「わ」と「ら」を加えています。
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
れ | いひ | にふじ | さみざ | よし | こご | ろむ | な | はぱばや | くぐきゅう |
お*わ | テア | ツ | ス | ホ | う | り | ちセ | エ | *ら |
エイト、テン(1)
・中国語=う、りゅう、ち
*印=「わ=0」は輪の形。「ら=9」は五十音のラ行は9列目
〔参考〕もっとルールを複雑にしてよいなら、もう3つほど加えられます。
・数字の形と似ている仮名(右に90度向きを変える)を加える
「へ=7」、「の=9」
・「ん=6」(古語の語尾「む」は「ん」と発音)
いかがでしょうか。無理のない形で、慣れるのにさほど時間を取らないはずです。2桁の数字を変換するには十分すぎるでしょう。3ケタ変換でもできそうです。
ただし、これで8桁~10桁の数字を意味の通る(?)句や文章に変換するのは、アイデアと運次第。かなり苦戦が予想されます。その必要がある場合は、まだ使ってない文字をバランスよく各数字に配置しなければなりません。それ相当のトレーニングを要するでしょう。特殊な目的(記憶力競技会やパフォーマンス)以外では、本末転倒の努力となります。
〔参考〕
欧米の数字記憶術(子音置換法)欧米では、子音置換法と呼ばれる、数字をアルファベットに変換する方法が一般的にとられています。
数字の変換ルールは日本人には一見してわかりづらいのですが、注意深く見ると、覚えやすさと造語力の両面から考えられており、きわめて合理的なものです。 たとえば、0(零)はZEROですが、スペイン語、イタリア語ではZがSの発音になるため、Sが加わり、さらに同じSの発音をする場合のCも仲間に入っています。 ちなみに、7のCはKの発音になる場合に使います。また、6のGはJの発音、7のGはGodのGです。 文字の形から連想されるものには、t と d=一本足、n=二本足、m=三本足があります。9が p, bになるのも説明不要でしょう。
なお、上の表は英語圏で使われるもので、言語が変わると子音の読み方などが変わるため、細かい部分では置換法は若干変わってきます。 また、記憶力世界選手権の優勝者の中には、子音置換法とはまったく異なる独自のシステムを提唱している人もいます。例えば、「1=A」「2=B」「3=C」…「6=S」…「0=O」などとする方法で、2桁区切りのイメージ変換に歴史上の人物や有名人のイニシャルを当てています 。 |