イメージ変換法+2項目連結法で
何でも覚えられる
〔実例〕 準化石、首都と国名、人物と業績の覚え方
イメージ変換法のさまざまな例を見てきましたが、この技法はそれだけを単独で使うことはありません。必ずもう一つの単語(用語)と併せて覚えるはずです。
たとえば「尾崎紅葉」という名前が出てきたら、少なくとも代表作の「金色夜叉(こんじきやしゃ)」とセットとで覚えるはずです。人物名とその読み方を覚えているだけでは、それは知っていることにはなりません。記憶するとは2つの言葉(概念)が脳の中で握手することなのです。
これは比喩(ひゆ)ではなく、物理的にも大脳の中でシナプスという神経細胞が触手を伸ばし、つながることを意味しています。
そこでイメージ変換法トレーニングの最後は、実際の応用例を見ながら、2項目連結法と併用する基本を学んでいただきます。
初歩的な応用アイデア
最初は中学生の理科から、やさしい例題をやってみましょう。地層中の示準化石(しじゅんかせき=堆積した年代がわかる生物の化石)と、その年代をセットで覚えるケースです。
古生代 ― サンヨウチュウ(三葉虫)
中生代 ― アンモナイト
新生代 ― ピカリア
6項目のうち、三葉虫とアンモナイトは教科書などの写真でイメージできるものとします。残りの古生代~新生代とピカリアをあらかじめイメージ変換しておきます。ピカリアは「ピカリ!」で決まりでしょう。
問題は「古・中・新」ですが、臨機応変にこの3つを表わす言葉を考えます。たとえば次のようなイメージ変換法はどうでしょうか。
A案 ・古=古い人=老人 ・中=中年男 ・新=新入生
B案 ・古=ぼろぼろの古着 ・中=今着ている服
・新=値札付きピカピカの服
A案でイメージ連結をすると次のようになります。
古生代 ― サンヨウチュウ(三葉虫)
老人の体に三葉虫がたくさんはりついている。
中生代 ― アンモナイト
中年男が大きなアンモナイトにかぶりついた。
新生代 ― ピカリア
新入生の全身がピカリと光った。
国名と首都を結びつける
例題10 次の国名と首都をイメージ変換した上で連結してください。 ①ポルトガル ― リスボン ②ハンガリー ― ブダペスト ③ノルウェー ― オスロ ④ルーマニア ― ブカレスト ⑤リトアニア ― ビリニュス ⑥ブルガリア ― ソフィア |
〔イメージ例〕
①ポルトガル ― リスボン
ポルトガルは「ポート(港)」、リスボンは「リス」
(ヨーロッパの)あるポートにリスの大群が上陸した。
②ハンガリー ― ブダペスト
ハンガリーは「ハンガー」または「ハングリー」、ブダペストは「豚・ペスト」
ハンガーに豚がぶら下がり、ペストになった。
③ノルウェー ― オスロ
ノルウェーは「バイキング」か「乗る上」、オスロは「オセロ」か「オス」
バイキング(海賊)が大盤のオセロをたたき割った。
④ルーマニア ― ブカレスト
ルーマニアは「ルー/マニア」、ブカレストは「ぶかぶかの服/レストラン」
ルーのマニアが、ぶかぶか服の男に、レストランでカレーをぶっかけた。
※「ぶかぶか」だけでブカレストが思い出せれば、レストランは不要です。
⑤リトアニア ― ビリニュス
リトアニアは「リトル兄」、ビリニュスは「ビリ(になったという)ニュース」
(背の低い)リトル兄は、かけっこでビリというニュースに笑い転げた。
⑥ブルガリア ― ソフィア
ブルガリアは相撲ファンなら「琴欧州」、一般的には「ブルガリアヨーグルト」。ソフィアは「祖父いや」か、古い映画ファンなら「ソフィア・ローレン」、その他、自分の知っている「ソフィア」がいればそのほうがよい。
大量のブルガリアヨーグルトを、「祖父はいや」と顔にぶっかけた。
人物と業績を結びつけて覚える①
思想や科学、芸術などで名を残した人物と、その業績、作品、主義などのキーワードを結びつける問題は、高校受験、大学受験、資格試験などでよく出ます。ここでは大学受験レベルの例題でやってみましょう。
例題11プラグマティズムとヒューマニズム ①ジェームズ…………「プラグマティズム」著 ②デューイ……………道具主義 ③孫文…………………三民主義 ④ガンディー…………サチャグラハ ⑤シュバイツァー……ランバレネの医療活動 ⑥ラッセル……………世界政府の構想 |
〔人物・キーワードのイメージ変換例〕
・プラグマティズム→プラ(スティック)のクマ
・デューイ→獣医 ・道具主義→大工道具
・孫文→孫 ・三民主義→3匹のミンミンゼミ
・シュバーツァー→酒買ツアー
・ラッセル→ラッセル車
・サチャグラハ→砂茶グラ歯
・ランバレネ→乱、ばれねぇ
・畝回政府の構想→世界の旗(万国旗)
〔イメージ連結の例〕
①(あなたの知っている)ジェームズさんがプラのクマに抱きついた。
②獣医が両手の大工道具(のこぎり)を振り回している。
③かわいい孫の顔に、3匹のミンミンゼミが留まって泣いている。
④ガンディーが砂茶グラ歯(砂の茶を噛んでグラグラの歯)になった。
⑤酒買ツアーで飲みすぎてて医療活動。乱、ばれねぇかな?
⑥ラッセル車に世界政府の旗(万国旗)をたなびかせた。
人物と業績を結びつけて覚える②
次は漢字だらけの場合をやってみましょう。日本古来の学問です。
例題12 日本の儒学と国学 ①林 羅山(はやし らざん) ― 朱子学 ②中江藤樹(なかえ とうじゅ) ― 陽明学の祖 ③伊藤仁斎(いとう じんさい) ― 古義学の祖 ④荻生徂徠(おぎゅう そらい) ― 経世済民 ⑤賀茂真淵(かもの まぶち) ― 「万葉考」 ⑥本居宣長(もとおり のりなが) ― 「古事記伝」 |
〔人物・キーワードのイメージ変換例〕
・林羅山→(よく知っている)林さん ・朱子学→朱肉
・中江藤樹→中へ! ・陽明学→陽光・明るい ・古義学→漕ぎ学 ・荻生徂徠→荻(ススキの仲間) ・古文辞学→古文の辞書
・経世済民→消せ―催眠(術) ・賀茂真淵→カモ
・万葉考→一万葉集 ・本居宣長→本の檻(おり)
・古事記伝→乞食 (※注:こじきは差別用語となっています)
〔イメージ連結の例〕
①林さんの顔に朱肉を塗りたくった。
②「中へ!」と言われて入ると、陽光が明るすぎる(何も見えない)。
③伊藤さんは毎日ボートを漕ぎ、ながら学問をしている。
④(一面にそよぐ)荻の中で、「消せー催眠術を」と叫ぶ。
⑤カモが、万葉集を加え、考えている(首をかしげる動作)。
⑥本の檻の中に乞食が住んでいる。
以上で、イメージ変換法のレッスンは終わりです。方法論は十分に理解できたと思います。あとは実戦的なトレーニングを重ねることで、スピードと精度を増していくことができるでしょう。
次はいよいよ記憶術の花形=「基礎結合法の習得」に進みます。
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