カタカナ語を漢字化するのも便利な記憶法
表情豊かな漢字のイメージ力を効果的に利用
漢字は数千年前の中国で発明されたもので、一字一字に意味がある世界でもユニークな文字です。仮名やアルファベットでは、初めて出会った単語の意味は見当がつきませんが、漢字ならなんとなく察しがつくことがあります。
また、漢字は実に表情豊かで、その形を眺めているだけで雰囲気や感情が伝わってきます。そんな漢字を記憶術に使わなければ損というもの。古代ギリシャで生まれ、欧米で発展してきた記憶術ですが、漢字利用だけは日本人と中国人の特権といえるでしょう。
漢字を記憶術に利用するのは、主にカタカナ語に当て字を使うような場合です。ゴロ合わせと感覚が似ており、両者を併用することで、無理気味のゴロ合わせを避けることもできます。
知らない花の名前や国名をイメージ変換する
植物の名前は、文学的な表現をする場合以外は、カタカナで書くのが一般的です。読み書きが楽になった分、イメージが分かりづらくて味気なくなりました。たとえば次のような花の名前を美しいと感じますか?ウチョウラン ハナトラノオ
フクジュソウ オオキンケイギク
覚えるのも大変そうな名前ですが、次のように美しい漢字がついているのです。
羽蝶蘭 花虎尾 福寿草 大金鶏菊
「チョウのような羽のついたラン」「トラのしっぽのような花」「福と寿がいっしょになったおめでたい草」「大きな金のニワトリのようなキク」…こんな美しいイメージの花を知ったら、いっぺんで覚えてしまいますね。
そこで記憶術では、古来日本人がよく使っていた「当て字」という手法を、個人的に記憶術のみに応用してみることにします。次に例題の形で解説します。
例題8 次の花の名前を漢字(当て字)混じりでイメージ変換してください。 ①クレマチス ②アスチルベ ③エキザカム ④プリムラ ⑤カランコエ ⑥ヘリオトロープ |
例題8のイメージ例と解説
①クレマチス ― 「くれ! マチスの絵」
マチスがイメージできない人は、「暮れ待ちッス」
②アスチルベ ― 「明日、散るべ」
花の命は今日が最後のようです。
③エキザカム ― 「駅坂無」
昔、パソコンに打ち込んだとき、最初に出てきた漢字変換です。
偶然、「坂の無い駅」に咲くという珍解釈が生まれました。
④プリムラ ― 「プリ/村」
ぷりぷり怒っていう村、それともプリン、またはプリクラの村?
⑤カランコエ ― 「カラン/声」…カランと声を出す花。
⑥ヘリオトロープ ― 「ヘリ/音/ロープ」
ヘリコプターのすごい音、見るとロープが垂れ下がって…。
例題9 次のアフリカの国名を漢字(当て字)で書いて、イメージ(ストリー)を頭に描いてください。(カタカナ語としてそのままイメージ化できるものは、漢字にする必要はありません) ①チャド ②コモロ ③ベナン ④ジンバブエ ⑤エリトリア ⑥ガンビア ⑦ガボン ⑧スーダン ⑨ボツワナ ⑩ニジェール |
例題9の解答例
①茶土 ②小諸(長野県) ③辺南 ④神馬笛 ⑤襟鳥亜
⑥眼ビア ⑦蛾盆 ⑧巣壇 ⑨没罠(わな) ⑩虹エール
漢字の選び方で、イメージはがらりと変わります。あなたのお好みは…?
最後に、記憶術のイメージづくりに正解はありません。イメージはその人の経験や感受性、教養、言語感覚、職業、趣味などによって微妙に異なるからです。「お手本」を参考にしながらも、自分なりのベストを発見してください。ただし、あまり時間をかけてひねり出したものものは、忘れやすいものです。傑作ではなくても自然に思い付いたものがよいのです。