イメージ連結法
記憶法と記憶術の決定的な違い
繰り返し唱えて覚える暗記法は
効率が悪い
試験のための暗記にはいろいろな方法がありますが、いちばん原始的なものは繰り返し唱えて覚えるというものです。たとえば、芥川龍之介の代表作、『鼻』と『河童(かっぱ)』を覚える場合、「芥川龍之介、鼻、河童……」と何度も心の中で唱えるわけですが、これでは効率が悪く、すぐに勉強が嫌になってしまいますね。
自宅で勉強するときは、心の中で唱えるのではなく、実際に声を出して何度もつぶやくほうが覚えやすくなります。目に加えて耳が暗記作業に参加するからです。
さらに、作者名と作品名を紙に書いてみると、手や指の作業が加わって大脳を刺激しますから、より暗記効率は高まるでしょう。この他に暗記の確認作業として、作者名をしおりなどで隠しておいて作品名を当てるという方法も誰もが行っています。でもこれらは実に時間がかかり、忍耐のいる暗記法といえるでしょう。
そこで、昔からいろいろな暗記の方法が考えられてきました。その中で最も効率がよく、威力を発揮するのが本サイトでご紹介する記憶術ですが、その前に「少し工夫された記憶法」について説明しておきましょう。その後で、記憶術と「工夫した記憶法」とどう違うのかについて具体例をあげて説明します。
少し工夫された素朴な記憶法
まずは記憶術以外の記憶法、暗記法です。え? 記憶法も、暗記法も、記憶術も同じ意味じゃないかって? それが違うのです。
たとえば「惑星の記憶法」とはいいますが、「惑星の暗記法」「惑星の記憶術」とはいいません。意味が違うからです。また、「記憶法」と「暗記法」は特定の覚え方に使うことが多く、「記憶術」は一般的な記憶の方法論について呼ぶのが普通です。
というわけで、まずは有名な「惑星の記憶法」からスタートです。ほとんどの方が、次のような覚え方を聞いたことがあるでしょう。
水金地火木土天海冥
太陽に近い順に、水星、金星、地球……と続くことを表しているのはいうまでもありません。これを「すいきん、ちかもくどー、てんかいめい」と調子よく声を出して読み上げるというものですが、素朴なわりにはよくできています。
なお、最後の冥王星は小さすぎるため、2006年に惑星の仲間からはずされてしまいました。
単語の頭文字をつなげる覚え方は、何の工夫もないよりもましですが、いつも上の例のようにうまくいくとは限りません。というより、上の覚え方は特殊な成功例です。そこでもう少し「記憶法」と呼ぶにふさわしい傑作をご紹介しましょう。
ゴロ合わせは「進化した記憶法」
高校で化学を習った人なら、ほとんどの方が教わった記憶法です。元素の周期律表ですが、ゴロ合わせの記憶法を知らないと苦労しそうです。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
H 水素 |
He ヘリウム |
Li リチウム |
Be ベリリウム |
B ホウ素 |
C 炭素 |
N 窒素 |
O 酸素 |
F フッ素 |
Ne ネオン |
ゴロ合わせの覚え方は次のようになります
水兵リーベ ぼくの船……(1~4番は頭文字、5~8番はアルファベットのゴロ合わせ)
このあとも、意味がありそうでなさそうな日本語のゴロ合わせが続くのですが、時代や地域によって多少異なるようです。なかなかの傑作記憶法だといえますが、これだけで他に応用が利きません。
創造力ある昔の人が作った傑作ゴロ合わせを利用しない手はありませんが、新しいものを自分が考えるとなるとかなりのセンスと時間が必要です。
その意味では数字のゴロ合わせも同様です。 √3(1.7320508…)を「人並みにおごれや」なんて、これ以上うまいゴロ合わせは、だれにも思いつかないのではないでしょうか。でも、これを知っていても、他の数字を覚えることはできません。
記憶術はそのようなものではなく、一つの方法を覚えると、他のことにもやり方が応用できるものなのです。
記憶術はことばをイメージ化して覚える方法
お待たせしました。ようやく「記憶術のやり方」にたどり着きました。記憶術ではことばをそのまま暗唱するのではなく、そのことばのイメージを視覚的に描いて、それを頭に焼き付ける方法をとります。
二つのキーワードを結びつける場合には、イメージとイメージをちょっと変わったやり方で結びつけます。具体的な例で説明しましょう。
「フォーク」と「りんご」を関連づけて覚えなければならないとします。フォークもりんごも頭の中に大きくイメージすることができますね。先が3つに割れた金属性の冷たいフォーク、そして赤い、つややかなりんご。その二つのイメージを、たとえば次のようなやり方でドッキングさせるのです。
「フォークをりんごにつき立てた」
このイメージ画像を頭に描くことができたでしょうか? イメージは鮮やかであればあるほど、強く潜在意識に深く刻まれます。こうしてイメージ化した記憶の痕跡(こんせき)を残すのが記憶術独特のやり方です。一度このイメージを頭に描けば、あとで「フォーク」といえば「りんご」という具合に、自然に思い出せます。
以上のように、記憶術の原理はたったの2つしかありません。整理すると次のようになります。
原理① 2つのことばをイメージ化する 原理② イメージとイメージを連結する |
どんな高度な記憶術も、2つの原理のさまざまな組み合わせや応用に過ぎません。世界記憶力選手権歴代チャンピオンの奇跡的ともいえる記憶能力も、この2つの原理から生まれているのです。
でも、その記憶術ができたとして、実際の勉強にどう役立つの?」という疑問がわいてくるかもしれませんね。そこで、今度は具体的な勉強に関係した例で説明しましょう。
〔記憶術の実例〕 作家と作品をイメージ連結して覚える
2つのイメージをドッキングさせて覚える方法を、高山メソッドではではわかりやすくイメージ連結法と呼んでいます(別名:イメージ結合法)。それでは勉強に役立つ具体例です。
芥川龍之介の代表作、「鼻」と「河童(かっぱ)」を覚えなければならないとします。
これを、「芥川龍之介、鼻、河童、芥川、鼻、河童…」と何度も心の中で唱えるのがこれまでの暗記法でした。少し工夫した暗記法では、実際に声に出して、目だけでなく口や耳も使う方法や、さらに手を使って書き出すという方法もあります。単に心の中で唱えるよりはいくらか効果があるでしょう。
記憶術では次のようなイメージを頭に鮮烈に描きます。
「芥川龍之介の鼻を河童がかじった」
あなたも実際に頭の中にイメージを描いてみてください。おもしろいでしょう? これが記憶術を使った勉強法です。勉強嫌いの人でも、これなら勉強が好きになれそうだと思いませんか?
このようにマンガチックでへんてこなイメージを脳に描く覚え方が、記憶術です。あなたはこれを「ばかばかしい」と思いますか? でも、ばかばかしいからこそ、努力しないで覚えられるのです。小難しい話は退屈でなかなか頭に入らず、すぐに眠くなります。さあ、あなたも記憶術で勉強を楽しみましょう。
なお、イメージ連結は2つだけでなく、3つ、4つとクサリのようにつなげることができます。こうしてイメージを連結するだけで、高校受験なら教科書や受験参考書の半分くらいは覚えられるのです。
ところで、上の例では芥川龍之介も、鼻や河童もそのままイメージできるものでした。でも、実際の受験勉強ではイメージできないもののほうが圧倒的に多いですね。そう、だから「どんな言葉でもイメージに変えるテクニック」が必要になってきます。これは記憶術の「裏方さん」でありながら、受験のための記憶術では最も重要な技術で、イメージ変換法と呼んでいます。
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