英単語連想記憶術の実例と習得法
短時間で大量に英単語を記憶する方法
さて、決して「王道」とは言えない英単語記憶術の方法について説明する前に、本来あるべき自然な英単語習得法について述べておきます。
理想論をいえば、英単語力は私たちが日本語のボキャブラリーを増やしてきたのと同じように、会話や文章の中で身につけるものです。現代国語や古典や漢文だったら、単語だけを単独に取り出して覚えるというような勉強はあまりしませんよね。
英単語も、ひとかたまりのフレーズや文脈の中で意味や使い方、微妙なニュアンスなどを覚えるのが理想には違いありません。いちいち和文英訳せずに、英文のまま意味を理解するのがいい、と教える英語指導者も少なからずいらっしゃいます。とにかくたくさん英文を読み、何度か同じ単語が出てくるうちに、自然に覚えてしまう。これができれば苦労はいらないわけですが、英語ばかりに時間をかけるわけにはいかないという現実があります。
そこで、「文章の中で覚える正攻法」とは対極にある「英単語連想記憶術」はどうか、ということになります。結論からいえば、英単語に記憶術を利用するのは使い方次第だといえるでしょう。文脈の中で自然に覚えられそうな英単語は、わざわざ記憶術を使うことはないのです。
なぜなら記憶術では、①英語の発音→②そこから連想する日本語なまりの発音(ダジャレ)→③そのダジャレから連想される正しい単語の意味、というプロセスを経ることになります。たとえば、「記憶術の種類と方法」のところで例として挙げた"cemetery"なら
cemetery ⇒ セミ取り ⇒ 墓地
(セミ取りに墓地に行った)
となるわけですが、〔cemetery ⇒ 墓地〕とダイレクトに覚えるのと比較すると、行程が一つ増えていますね。「忘れにくさ」と引き換えに、意味を把握するスピード=瞬発力を失っているわけです。
そこで、記憶術を使って英単語を覚えるのは、覚えづらい単語や、似たようなスペル・発音の単語があって紛らわしい場合のみに使うのがよい、ということになります。記憶術に習熟すれば(個人差がありますが)、単純反復法に比べて5倍から10倍のスピードで覚えられるでしょう。
ゴロ合わせ英単語記憶法の実例
それではゴロ合わせによる英単語記憶法の実例を紹介しましょう。誰でも似たようなダジャレが思いつきそうな短い単語の例です。・artery 動脈 この辺りが動脈だね。 ・assassination 暗殺 「朝死ね~」と言って暗殺。 ・cactus サボテン (砂漠の絵が物足りないので)描く、足す、サボテンを… ・equator 赤道 行く、ウェイターと赤道の旅。 ・fringe 房飾り 不倫時は房飾りで隠そう。 |
こんな要領で覚えるわけですが、いかがでしょうか。
ゴロ合わせやダジャレは人によって感覚が多少異なるので、短い単語はいいのですが、長い単語は多少無理が生じます。次のような例は、ピンとこない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
・isolate 分離する A案:愛想late(遅)過ぎて分離する。 B案:愛、それて、分離する。 ・instiute 設立する、研究所 淫す、血チューと吸って、怪しい研究所を設立する。 |
短文を丸暗記するのではなく、状況イメージを描いて記憶する
さて、英単語の記憶に連想記憶術を利用してみようという方に、2点ほど注意しておきたいことがあります。その第一は、短文を丸暗記するのではなく、描かれた状況イメージを頭に視覚的に描いて覚えるということです。たとえば「cactus=サボテン」なら、脳裏の画用紙にサボテンを「書く足す」している情景を思い浮かべるのです。
「insutijute=設立する、研究所」なら、いやらしい雰囲気の中で女性の血を吸う研究所を思い描き、同時にそれを設立する偉そうな人を連想します。
市販されている英語記憶術関係の本では、こうしたイメージ化の方法が示されていませんから、多くの方は歴史年表のゴロ合わせ記憶法と同様に、短文そのものを一生懸命覚えようとします。でも、これでは効率が悪いのです。「よけいな回り道」と批評されても仕方ありません。
英単語のダジャレは自分流がいちばん!
でも、自分でゴロ合わせを考えるのは面倒。時間がかかりそう。
それって、コツが要るんじゃないの?
…というような声が聞こえてきそうですね。確かにそうかもしれませんが、練習すれば誰でもすぐに先に示した程度のゴロ合わせはできるようになります。まあ、「練習すれば」という点が、あらゆる記憶術において最大のネックになるわけですが…。
実は、英単語(連想)記憶術は、イメージ変換法とイメージ連結法(結合法)という基本的な技法の組み合わせで成り立っているものです。だから、記憶術の基礎トレーニングをしないでやろうとすると、先に述べたような「短文を丸暗記する」ということになってしまうのです。これでは記憶術をほんのちょっとしか使っていないことになり、「術」と称するほどの効果は期待できないでしょう。
記憶術といえば、基礎結合法(場所法、ローマン・ルーム法、帳簿法などの別称がある)や数字記憶術が有名ですが、基本中の基本となるイメージ変換法とイメージ連結法(結合法)を少しだけ練習すれば、英単語はもちろん、その他の外国語単語や、地名、人名、化学物質名などのカタカナ語もまったく同じ方法で覚えられます。練習に多少の回り道をしても、「急がば回れ」のことわざどおり、そのほうがより確実で早いといえるでしょう。
※イメージ変換法やイメージ連結法についての解説は ⇒ イメージ連結法/記憶術と各種暗記法の決定的な違い ⇒ イメージ変換法/新用語や固有名詞も鮮明に記憶 |